電脳迷宮

<18回目>シンガポール

うらやむべきか心配すべきか

■三度のビックリ作
年末にシンガポールとマレーシアに行ってきた。
着いてビックリ、シンガポール空港って免税売店としてパソコンショップができてるじゃないの、うれしくなってしまった。
街へ出て再度うれしくなったのは、本物のキャナルシティ(?)で食事を楽しんだこと。ボート・キーってところは高層ビルを背景に運河沿いに中華、インド、タイ、イタリア、日本などあらゆる国のレストランがいっぱい。
つい、うきうきとしてたら今度は三度目の驚き。インターネットのホームページのアドレスをビルに書いているところがある。何だろう、ってのぞき込んだらインターネット・カフェだった。しかも夜の十一時なのにお客が結構入ってる。

■次々と出る略称
ふぅーん、シンガポールも頑張ってるじゃない、なんて思いながら翌日、国家コンピューター庁(NCB:National Computer Board)を訪問。ここはシンガポールの情報化を中心的に推進してて、三年ほど前、数人の方々が大分まで見学に来られたこ とがあるし、さらにハイパーネットワーク別府湾会議にも来てもらったこともある。
何しろ、アメリカの情報ハイウェイ構想はシンガポールが発案したものをベースにしている、という話は有名。IT2000(Information Techonology 2000)と呼ばれる二〇〇〇年に向かっての情報化ビジョンは衝撃的であったものです。
今回は、そのビジョンが具体的にどう推進されているか? と、興味を持って行ったのですが、今度は具体的な事業名として「シンガポールONE(One Networkfor Everyone)」というものを推進しているという。うーん、次々と出てくるこれら の略称はだれが考え出すんだろう?

■大分方式に類似 彼らの方式は現実にネットワークを持っているところらしく現状からステップアップしていくものであって、聞けば聞くほど大分方式に似ている。要は、まずはISDN(総合デジタル通信網)などを活用した現状インターネットの普及を図る。
それらをステップアップさせるためのものとしてCATV(ケーブルテレビ)や、ADSL技術(普通の電話線で高速通信を行う方式)などの新技術を積極的に試験採用して通信基盤を構築していこう、その上に、コンテンツ・ビジネスが立ち上がるこ とを推奨していく、という考え方なんですね。
それだけに普及に現実味があって、役所への許可申請書類も一部はインターネットで受け付けるほどだし、英語圏だけあって日本以上に普及している感触。

■一歩間違えた
福岡出身で古くからのコアラ会員であるKDDシンガポール所長の上田さんは、現地独立採算を図るために新ビジネスを取り込もうとしているのですが、「現地日本人向けにプロバイダーでもやりたいところだ」と、インターネットのここでの“当たり 前さ”を表現してました。
ただし、大きな違いは規制があること。プロバイダーは許可制で現状三社のみ。うん、これならしっかり採算がとれるだろう。第二位の会社であるパシフィック・インターネットを訪ねてみたのですが、一昨年十月にスタートしたが、既に五万人のユー ザーを集めたとのこと。うらやましい。
で、実はその絞った三社に、シンガポール政府は過激なアダルトものなどにアクセスできないよう、プロバイダー装置の中にアクセスを選別禁止するコンピュータを強制的に設置させているんです。一歩間違えば表現の自由を奪う諸刃の剣なんですが。 いかにも都市国家シンガポールらしい。貿易立国で黒字国らしい積極情報化策をうらやむべきか、それとも未来を心配すべきか、悩んでしまう。

(ニューコアラ事務局長・尾野徹)

※ 掲載内容はコンテンツ制作当時の情報です。