<17回目>首脳会談
生の感動、真の臨場感を
■専用ページ制作
二十五、二十六日に日韓首脳会談が別府で行われた。
ワールドカップサッカーがもたらした新しい友好交流の第一歩だし、別府のためにも、いや、九州、日本全体のためにもいいことだ、と喜んでいたんです。
年が明けて、パソコン通信の電子会議の中でもそのことが徐々に話題になってきて、だれかが「専用ホームページをつくろうよ、別府を世界に知ってもらう素晴らしいチャンスだ」と言い出した。
「しかしどうやって情報得るの?」「どうせつくるなら本格的に『公式情報』を入手したら?」「え? どうやって入手するの?」と、話が膨らんできてしまった。
そこで悩みながら県の広報広聴課に相談したけれど、「うーん、大分をPRする絶好のチャンスだからよいこととは思うけれど。外務省に聞いてみます」との返事。
■CNN並み中継
後で聞いた話だが、前例のないことだし、前例をつくると大変だし、と、みなさん悩んだようです。結局、特別に記者証をいただき、共同記者会見場の末席にそーっと座らせていただけた。
われわれはそこにディジタル・ビデオ・カメラを持ち込み、会見終了の三十分後にはCNN並み(?)に地球の裏側にまで時間差生中継映像を届け、かつ、それ以降はビデオ・オン・ディマンドで、だれでも好きなときに好きな画面を自由に見ることができる
サービスをやった。
そこで気がついたんです。既存のマスメディアは紙面や時間制限から全部の情報を届けられないが、インターネットはほとんど制限なし。大統領と首相の記者会見は始めから終わりまでの完全ノーカットだし、平松大分県知事と
井上別府市長のブリーフィングも全部が文章化して完全掲載できた。
■感動の記者会見
これら公式情報は世界中から検索対象となるのであって、アメリカ並みの情報公開の最先端状況そのもの。
考えてみれば、日韓首脳会談というような厳重警戒な公式行事をインターネット局そのものが“独自取材”の形態で情報発信するなんて世界でも初めてのことのよう。外務省の方も「なるほどそういうことになるのか」と後で言われたとか。
しかし、記者会見、感動的でした。
前日の梶山官房長官の「従軍慰安婦発言」に日韓双方の記者から質問があった。「日本の政治家が何度も同じような発言を繰り返す。これで本当に両国民は友好関係が築けるのか?」。そういう質問に、金大統領はこう答えた。
「過去を隠すことは出来ない。ありのままの事実を受け入れねばならない。ヨーロッパもアセアンも同様の障害を克服して和合している。われわれはそれをお手本にしてやっていかねばならない。韓国と日本は特殊な関係にあるのであって、過去を乗り越えて、しかし、過去の事実は事実としてしっかり認識して、未来に向かわねばならない」
■未熟なメディア
その実際の場はすごい迫力を感じました。
いわば、ガマンにガマンを重ね、それでも感情を押し込め、くちびるをかみ殺しつつ、(同胞よ腹がたつだろう、苦しいだろう、がじっと我慢して)未来をみよう、前を向こう、と呼びかけているようで、一市民としてその姿は真に人の心を動かすものだと思
いました。
その姿を見つつ、コアラの主婦会員の浦塚さんのことを思い出した。
戦争を女学生の時に経験された浦塚さんは「死ぬまでに一度韓国に行って、だれでもよい、同じ世代の女性に会って、日本人として『ごめんなさい』と心から謝ってきたかった」という。それがやっと去年、大分県の婦人の船で韓国に行けて実現できたのです
が、そのときの話をパソコン通信の電子会議で述べられていたんです。
そして、思ったのです。インターネットはこうやって世界の人にオン・ディマンドで情報を提供できるように成長してきたが、まだまだこの生の感動、真の臨場感を届けることができない未熟なメディアだ、ということを。
※ 掲載内容はコンテンツ制作当時の情報です。