電脳迷宮

<11回目>カフェ(上)

かつて文字、今ビデオ

■身近に感じさせ
コアラには「カフェコアラ」というバーチャルな、ネットワークの中だけにある喫茶店があるんです。喫茶店があれば、モチ、素敵なウェイトレスさんもいる。
一人は山崎佐和子さん。今はOLですが、技術系企業を経営する家庭の中で育っただけあって、大学生時代からマルチメディアパソコン持ってコアラしてるお嬢さん。
実は、インターネット黎明期、その面白さを何とか皆さんに分かってもらおうと苦心してたころ、彼女を口説いてモデル的にホームページづくりに取り組んでもらったのです。すると、若い女性らしく自分が趣味で編んでいるセーターやマフラーを写真に撮って掲示。
当時(といってもホンの二年ちょっと前ですが)の男性主体、技術者主体の難しそうなインターネットをとても身近に感じさせるきっかけになってくれたのです。

■慕われ頼られて
そしてもう一人は帆足美佐子さん。歯科技工士さんですが彼女も学生時代からのコアラメンバー。とってもマエムキで積極的な彼女は、確か十九歳のときだったと思いますが、キチンと両親を納得させ、コアラの「コリア会議室」で知り合った韓国の人たちの誘いをうけて、他の三人の男性諸君に交ざってソウルで行われた韓日パソコン 通信フォーラムに参加。
大いに交流を盛り上げた結果、韓国情報産業協会会長から感謝盾をもらってしまった。

この二人の元気なウェイトレスがいれば恐くない。パソコン通信の電子会議室をカフェと見立て、バーチャルに来店するお客さんのさまざまな話を聞いてあげたり聞き流したりと、皆さんから慕われ頼られている。

■融合を楽しんだ
そこを見込んでちょうど二年前の秋から翌春までの半年間、ラジオ番組に出てもらったんです。番組の名前はもちろん「カフェコアラ」。私も“常連の客”として出演。 何しろインターネット普及前夜。番組の中で私は、パソコン通信の面白さを表現す るだけでなく、二人に「インターネットでこんなことができる、あんなことができる」「絵や音が扱えてこんなに楽しい」と、口説き続けたような番組でもあったな。
そのようなもくろみとは関係なく、彼女たちのおかげで生放送のラジオスタジオに多くのコアラメンバーが毎回“来店”、大いに盛り上がって、パソコン通信とラジオ番組の融合を楽しんだのすね。
で、番組が終わって半年たったころ、インターネットに新しい技術が登場。長いラジオ番組をそのままインターネット上に流せるようになってきた。

■海外からメール
そこで佐和子さんが過去の番組をラジオ・オン・ディマンドにしてホームページに毎週一つづつ掲示。これだとインターネットの通じる世界中からアクセスができるし、現に海外在住日本人から「毎週楽しみにしています」とメールがやってくる。
結果的に一年前の放送を毎週インターネットで“放送”する格好なんですが、今度は世の中のインターネット認知が上がっててちょうど聴きやすかったのかな。
そうそう、阪神大震災の日も生放送したのですが、神戸から遠くの私たちのうろたえぶりを一年後にインターネットで神戸の人が聞き、「感慨深いものがあります」と感想を寄せられたり……
さらにそれから半年、技術は進み、新たな展開。今度はコアラ事務局に簡易なTVスタジオができ、そこから毎週月曜十九時三十分から、インターネット上にビデオ映像の「カフェコアラ」を開店。
二人は当初の文字だけのウェイトレスから声を出し、ついにはビデオ映像でバーチャルに出現し始めたんですねー。

(ニューコアラ事務局長・尾野徹)

※ 掲載内容はコンテンツ制作当時の情報です。