<7回目>ニューヨーク
大きなネットの小さな起業
■双方向観劇に笑う
ブルー・マンのインタラクティブ・チューブ・コミュニケーション・システム(双方向「配管」通信システム?)って知ってます? 知ってたらかなりの通ですよ。
ブルー・マンってのはニューヨークで大人気のオフ・ブロードウェイ・ミュージカル。まぁ、これほど面白くって英語が分からなくっても笑ったミュージカルってなかったな。首から上が完全にブルーの塗料で覆われて目だけが異様に光るブルー・マンた
ちにあっという間にのせられて、舞台と観客席が一体となってインタラクティブ(双方向)観劇になり、始まる前から終わりまで笑いっぱなしなんだけど。
そこに出てくるハイテク・コンピューター・ネットをもじった彼らの未来型通信システムなんですが、なんのことはない。えらい真剣そうな説明ビデオは「配管はつまることがある。そのつまりがうまく作用すると、バスルームのバスやトイレから“逆流”が起こって利用者とインタラクティブが実現」というオチになる。
今のニューメディア・フィーバーを皮肉るし、マスメディアが言う「双方向」って意味もこの観客とブルー・マンの一体的コミュニケーションの前にはかすんでしまう、という二重の面白さで客席は爆笑なんです。
■電子メールないと
実はアメリカに行く前にニューヨーク在住の九州人・江口ゆきえさんと電子メールをやりとりして、ミュージカル観劇の手配をしてもらってたんです。彼女はニューヨーク大学で「どうやって外国語を教えるか」を教えているのですが、パソコンに弱い彼女でも(ゴメン!)大学では電子メールがないと授業にならないようで、当たり前に
使ってる。
もちろん、そういった人たちのためにたっくさんのプロバイダー(インターネットの接続業者)があって、ジェトロ・ニューヨークで電子機器を担当している前川徹さん(通産省出身)は、その中でももっとも古いPanixという小さなプロバイダーと契約
しているとのこと。ユーザーはたかだか六千人ぐらいでコアラとそう変わらない。ちょうど私が前川さんを訪ねた日の新聞に「Panixがハッカーにやられた」って掲載されたようで、アメリカでもこの手のクラッキング(破壊)はニュースになるご時世ら
しい。ふーん、コアラだけじゃなかったんだ。
■シリコン横丁宣言
その前川さんから紹介してもらってウォール街にある日本人経営のメディア・ジャパンというインターネットでホームページ作成をしている小さな企業を訪ねてみた。
なぜウォール街かって? ここがポイントなんです。金融不振でウォール街は企業がじゃんじゃん出ていって空きビルが多くなってしまい、困ったニューヨーク市長はシリコンバレーならぬシリコンアレー(シリコン横丁)をつくる、って宣言したんですね。
具体的には、市有のビルをインターネットなどの通信線が張り巡らせられるように大改造。入居企業にはその通信費を安くしたり税制上の特典を出したりした。そこにメディアジャパンが立地したというわけ。
■大企業だけでなく
社員は数人のようで社長は出張中でしたが、向井よしこさんという女性がwebデザイナーで頑張ってた。ニューヨーク在住の日本企業の日本語ホームページづくりが主体、とのことで、それなりに需要があるらしい。
ふーん、タイムワーナー(ケーブルTVでのインターネット実用サービスを始めたばかり)やAT&T(電話加入者を確保するために契約者にはインターネット接続費は一年間無料サービス!)といった大企業だけでなくってもみんな頑張っているんだ。インターネットってこういった小さな活動が起こせるのが楽しいですね。
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