電脳迷宮

<6回目>国際会議

シリコンバレーで話す

■十五カ国から参加
アメリカのシリコンバレーに行ってきた。
九月八日-十一日、スタンフォード大学とスマートバレー公社主催の国際会議CONNECT'96に招かれて。議題は「どうやって地域ネットをスタートさせるか」「地 域ネットワークのリーダシップのあり方は」など。
スマートバレー公社とは、冷戦終了で不景気になったシリコンバレーを情報ハイウェイ、つまりネットワークを活用して再活性化させようと発足した官民合同の第三セクター会社。そこの社長だったハリー・ソールは過去二回大分で行われた「ハイパー ネットワーク別府湾会議」に参加しており、われわれとは旧知の間柄。
参加者は百五十人ほどで、ヨーローッパ、アジア、アメリカ大陸の十五カ国から三十ほどの地域プロジェクトが名を連ねている。日本人の参加も多い。

■成功した地域事例
日本を出発する数日前に「遊び着でなくビジネス服装で」と電子メールで言 ってきたりで、英語も習慣もよく分からない悲しさ、今一歩様子が飲み込めないモノの、だんだん会議が進展するにつれて分かってきた。
スマートバレー公社はもっとも成功した地域事例として世界から認知され、見学が後を絶たない。その成功にあやかって、スマートアラバマ、スマートトロントなどと「スマート」を冠したプロジェクトが世界中に出来るほどにスマートバレーに学ぼう、という気運があるようだ。
そこで、見学・問い合わせの多さに「いっそのこと勉強会を催そう」ということになったようで、日本人参加者が多く感じたのは「学ぼう」という方々だったようだ。かつ、研修費を取るのでパネリストはしっかりネクタイをしておきなさい、というご指示。なるほど。

■それぞれに悩みも
ところで三十の地域プロジェクトはそれぞれにとっても大きなプロジェクトばかり。
マレーシアのMSC構想(大空港や世界一のノッポビルを建て、その一大区域をマルチメディア特区とする)やシンガポールのIT2000構想など国家レベルのプロジ ェクトから、フランスやオーストラリアなどの第三セクターでの大規模地域開発などなど。
これからの地域開発は情報化が不可欠だし、道路と同様に最初からやておかねば、と、地域ネットづくりに取り組んでいる。そうか、参加してる神戸の震災復興プロジェクトも大規模開発だな。そういったとこ ろが、実はそれぞれに悩みがあって集 まっている様子。
フリーディスカッションにしたいらしく、前夜の簡単なミーティングでは「細かなテーマはそのパネルまではナイショにしときましょう」だって。
これは困った。英語はチンプンカンなのに。しかし、そこはコアラと二人三脚で動くハイパーネットワーク社会研究所の会津泉さんが完全に通訳フォローしてくれる。

■サバイバルゲーム
自ら発言せねば一度も発言できない、というサバイバル・ゲームにも似たフリーディスカッション風のパネル討論会。招待されたわけだからそれだけのことはしなければ、と、何度も手を挙げて話してきた。何しろ参加者のなかでは最も古い地域ネットのようだし。
つまり、どのような開発形態であろうとエンドユーザーは市民であり、市民主導、ネティズン(ネットワークを使って活性化された市民)主導の仕組みや社会システムが市民生活や企業活動、地域づくりを豊かにさせるはず、と、その未来ビジョン・理念を九州人っぽく話してきた。
ふふ、ネイティブスピーカーより回数多く話したかもしれない。終わった後で皆さん握手しにきてくれたし、ハリー・ソールは「コアラは先生でもある」なんてスピーチしてくれた。お世辞でもうれしいじゃないですか。

(ニューコアラ事務局長・尾野徹)

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