<2回目>ハッカー侵入(下)
ボーダレスを実感
■他人のため提供
コアラは、地方や地域に住む楽しさや素晴らしさを実現したい、それを電子ネットワークを使って、と、集まってできたグループだ。つまりは、地域興し的な要素が主体であり、ボランティア精神そのものでスタートしたといっていい。
実は、インターネットもボランティア発想がその根底にある。世界中のコンピューターを電話線で結んでゆくが、自分としては隣までの電話料金だけを負担し、右から来たデータを自分のモノであれば受け取り、自分のモノでなければそのまま左に回し
ていく。
そうやって回り回って全てのコンピュータ同士の通信が出来上がるし、そこには他人のために通信回線や自分のコンピューターを資源として提供しあうというボランティア精神がある。
■盗む意義薄いが
ということは、コアラを通じて使っているインターネットは、ボランティアの上にボランティアを二重に構築しているのであって、とってもネアカでマエムキな気運があるのもうなずける。従って、皆はボランティア精神にのっとって、他人が喜んでく
れそうなデータや情報を互いに持ち寄り、それらをホームページなどで積極的に公開していく、という使い方が主流であった。
つまり、秘密がない。いやもちろん、個人のメールなどプライパシーの絶対なる秘密はある。が、基本的に皆が持ち寄るデータは秘密情報ではなく「積極的に公開しあいたい情報」であって、そこにはシステム侵入を図って情報を盗み出す意義が薄い、
というのが過去の日本の地域ネットワークの一般的常識だったかもしれない。
■クラッカーたち
しかし、そこには落とし穴があった。今年の四月十二日未明、コアラのインターネット部のシステムとデータが何者かに消去されてしまった。つまり、データを壊すことだけを目的にする「クラッカー」の存在だ。
一般的にアメリカでは「ハッカー」とは難しいシステムに侵入できるほどのコンピューター技術を持つ頭の切れる人たちのことを言うようで、悪さをし、他人に被害を与える者を区別して「クラッカー」と呼んでいるようだ。
考えてみれば当然で、ネットワークの外でも他人の持ち物や公共物を壊したりして楽しむ輩(やから)はいるのであって、それに無頓着なのは単に「日本の安全神話」に腰掛けているに等しいことだった。
■韓国当局が発表
しかも世界と接続されているインターネットはボーダーレスであり日本の常識だけでは制御できない。六月には、韓国当局が「コアラのデータを破壊したクラッカーは韓国のコンピューターネットワークを(国外からも含めて)経由して、あるいは使っ
ている可能性がある」と、韓国国内の新聞やTVで、われわれの知らぬところで発表した。
それは、まさにインターネットが世界という単位で動いていることを、別次元で感じさせられた出来事であった。
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